唐沢雪穂・桐原亮二

2003年10月17日
 『白夜行』 東野圭吾

 変わったな。変わりかけていたものがここで変わった。

 東野圭吾を色々読んできたが、この作品だけは取っておいた。『白夜行』以前の作品でも、その思考錯誤はあったが、ここでそれが如実に出た。その変化は、有栖川有栖から宮部みゆきへとでも言うような変化。端的に言えば社会派への変身。前後するが、『理由』や『模倣犯』に近い感触を持った。そしてそれは、少し残念でもあった。フーダニットに止まらないミステリを模索し続けてきた東野圭吾が、その答えとしてミステリではないミステリを選んだのかと思うと。

 ただ、この後の作品でそれがどうなったのかもまた楽しみでもある。

 内容は、面白い。文句無く。
 大量の登場人物に、破綻の無いストーリー。決してその内面が語られない本当の主人公。特に、雪穂には存在感、なんとも言えない迫力を感じる。

 文章の密度も変わったように感じられる。濃くなった。それでいて、やはり東野圭吾であるから不思議だ。

 ただ、この話は桐原は無くとも雪穂無しには語れないのだが、あまりこの雪穂が好きになれない。こういう行動原理で動く人間。端的に言うならば、「自分がやられて嫌な事を、関係ない他人にする」。そこには理由があって、そのために切なくなるような話なんだろうが、ダメだった。

 その代わり、周囲の人物が。篠塚一成と、雪穂の友人江利子に面白さを感じた。美佳の下りは余計だったかも。

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