最近読んだ本

　『海のある奈良に死す』有栖川有栖

　サブリミナル効果を使ったトリックだったが、そもそもサブリミナル効果は効果があるのか。動機の方もわかるようなわからないような。この人の本は、無味乾燥な感じがして、物語を読んでる気がしない。ちょっと合わないかも。


　『バルト海の復讐』田中芳樹
　
　話自体は、自分を裏切った雇い主に復讐をして終わりという単純なもの。語り口が好きなので、ポンポン読める。話と話の合間にある、豆知識と言うか、時代背景の描写は好きなのだが、それがちょっと多すぎるのが難点か。

　『名探偵の呪縛』東野圭吾

　ミステリとしてはどうなのだろう。ミステリを使ってミステリを笑い話じみた話にするというアイディアは面白い。それでも好きなんだな、密室トリックが。
　
　『ジャンヌダルク暗殺』藤本ひとみ

　久しぶりにこの人の本を読んだところ、かなりきつかった。少女漫画をそのまま活字にしたようなストーリー。背景は丹念に調べてあってしっかりしてるのだが、野望を持って成りあがろうとする娼婦という設定はいかにもという感じで、心理描写に「とろけるような」「甘美な」というのを多用。知りすぎている話が舞台というのも宜しくは無いが、それでも読み出すと面白く読めるのは、さすが。

　『鳩笛草』宮部みゆき

　短編の中では、今までで一番面白かった。「我らが隣人の殺人」も面白いらしいので読んでみたいが。
　全て超能力ものだが、見たい事を選べない予知能力者。力を抑えきれず発散する相手を探している発火能力者。その力で女刑事になったものの、それを失いつつあるテレパシスト。
　クロスファイアの前作にあたる「燔祭」が一番物悲しいが、この話だけでは消化不良気味。短編としては、主人公の孤独を感じられる「朽ちてゆくまで」が印象的。
　表題作の「鳩笛草」は、自分の力がなくなってゆく焦りが感じ取れるが、その焦りは「模倣犯」の登場人物、作家の前畑滋子に近いものを感じた。